ジョン・レノンが死んだ日
ジョンの命日は12月8日で日本でもこの日に追悼イベントが行われたり、ラジオでたくさんジョンの曲が流れたり
する。でも彼が死んだのはニューヨーク時間の8日夜11時半過ぎ。だとするなら日本は9日であり、
日本での命日は12月9日とすべきではないかと思う。実際亡くなった日よりも先行して、ニューヨークよりも
前に追悼するのは変じゃないか?
で、ジョンレノンが死んだのは1980年だから自分が高校2年生の時だった。
冬の期末試験の真っ最中で
その日は2つか3つ試験をこなした後、家に帰り2階の自分の部屋に閉じこもって翌日の試験の予習をしたりレコードを聴いたり寝たりしていた。
気分転換に下りてきたら妹が「お兄ちゃん、ビートルズの誰かが死んだらしいよ」と教えてくれた。それを最初聞いたとき僕はそれほどあわてなかった。
妹に返した言葉は「ああ、リンゴだろ。多分。」リンゴ・スターと彼の家族には申し訳ないのだが、勝手にリンゴだと思ってしまったのだ。そのころたまたま雑誌で見た彼の顔がひげだらけで薄汚れた感じを受けたのと、彼のビバリーヒルズの家が焼けたというニュースを前に聞いていたのが頭で結びついて、それで死ぬ理由は全然ないのだが、うらぶれたリンゴ・スターの顔が頭に浮かんで勝手にそう思ってしまった。
それから直に自分にとっての第一報を聞いたのはラジオからだったか、テレビのニュースだったか。よく覚えていない。しかしその衝撃はものすごかった。
(今ならあっという間にネットで流れるのだろうが、その頃はニュース番組が始まるまで待たねばならなかった。)
うそだろう、と思った。ジョンが死んだ、しかも射殺。テレビからはジョンの映像が繰り返し流れ、ニュースはその死を報じている。ジョンにとっては5年ぶりに音楽活動を再開した直後だったので、最新の映像に乏しく、5年前のアルバム「rock’n roll」からのプロモーションフィルムが多く流れた(SLIPPIN’ AND SLIDIN’とか)。それもちょっと違和感があった。rock’n rollは文字通り彼が十代の頃に影響を受けたロックをまとめた、回帰的なアルバムであったから代表的なジョンではない。最新のダブル・ファンタジーのプロモはその時まだ間に合ってなかったのかよくはわからない(セントラルパークを歩くジョンとヨーコが印象的なPVの「WOMAN」は死後数ヶ月してからのシングルカットだからね)。
明日はまた試験があるのにそれから僕は予習どころではなくなった。ジョンが殺されたという事実をどう頭の中で整理していいかわからなかった。自分が大好きな、尊敬しているジョンが殺されたというのに、勉強という自分本位の行動をするのは不謹慎だと感じて、試験の予習をやめた。自分なりの服喪。それでも時間が来るとお腹がすく自分を情けなく思った。
テレビのニュースを追いかけそれが終わるとラジオに聞き入った。
オールナイトニッポンを始め各ラジオが急遽ジョン・レノン追悼特集をくんで繰り返しジョンのソロのレコード、ビートルズ時代の曲を流した。
それはCOME TOGETHER だったが、久しぶりにターンテーブルにのせたせいだろう、針がとんで同じフレーズを繰り返したりして、しまらなかった。
なんと世の中は間抜けなんだろう。
しまらないのにDJとゲストは無理矢理神妙な声を出すものだから。
なかには追悼の意を込めてといってYESTERDAYがリクエストされそれをまんまDJが流してしまったりして
腹がたったのと、ラジオという音楽を重視しているメディアでさえビートルズやジョンのことをあまり知らないことに失望した。
高校生というのは世の中に対して漠然とした不安を持っている時期だ。
妙に厭世的になったり絶望したりしてしまう。自分もそんな若僧のひとりだったのだが、ジョンは僕にとってそんな絶望的な世界の唯一の希望だった。
彼がいれば安心、彼がなにかいってくれればそれを指針にいきていける、そんな気分だった。まさにキリストのような存在だったのだ。
そんなジョンが死んだ。なぜジョンなのだ。なぜビートルズの中で一番好きなジョンなのだ(これは裏返せば他の誰かだったら良かったのに、ということになってしまうが、決してそうではなくなぜジョンが、という気持ちだった)
期末試験はなんとか赤点をとらずに済んだ。
以後、日がたつにつれ数々のテレビ番組で音楽関係者、評論家、さまざまひとたちが登場してジョンのことを語った。なにひとつ胸をうつようなコメントはなかった。ジョンの(オノ・ヨーコの)親族という女性がワイドショーで「ジョンおじさん」と呼んでいたことが新鮮だった。ジョンに日本人の親戚がいるということ。考えてみれば確かにそうだ。
2年後大学に合格して僕は待望の東京生活を始めた。
そこで渋谷のエッグマンの追討イベントに行ったりしたのだが
長くなったのでこの話はまた来年のジョンの命日に。


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